サードウエーブコーヒーが標準で使うアカイアコーヒースケールをプロ目線で完全レビュー!

コーヒー 自由研究

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コーヒーのブリューイングで革命的な道具として?とりあげられたデジタルスケール、アカイアコーヒースケール。ドリップ中のデータをスマホのアプリにオンタイムに飛ばす姿にハイテク感と最先端感をたくさん感じますが、では実際にそれを使ってみてどうなのか、たくさんの人が導入すべきなのか、と思い、実際に買ってみて実験してきました。

 

●全体の感想:参考レビューが皆無で困った
基本的な機能説明は、数々のコーヒーやさんサイトが行っているのですが、その機能を活用してどうなったか、という、いわゆるレビューは日本国内サイトでは皆無でした。2016年8月現在、発売開始から2年近くが経ってるとは思いますが、やはり出回っている数が少ないようで、まずは業務として使っている人や組織が購入している感があります。

 

●本体の感想:「重量を感じてからのグラム表示が素早い」は、スケールとしては当たり前の評価のはずだが
このスケールを導入した業者系のコメントをいろいろと聞いたり見たりしていると、

1.重量を感じてからのグラム表示が素早い
2.スケールが0.1g単位で反応する

というところに非常にエキサイトされてます。

ハンドドリップ(ブリューイング、マニュアルブリュー、ペーパードリップともいう)中にほしい情報としては、注湯のたびに増えていくお湯の量がどのくらいかを、オンタイムで把握できることです。お湯を注いだらすぐにスケールに反映してもらいたい。これってあたりまえですよね?と思うのですが、関係者たちはばらつきがある、と言います。

たとえば、スケールにストップウオッチ機能が内蔵された初めてのスケールとして大注目され、コーヒー屋さんの多くが採用しているハリオのデジタルスケール。

2016年8月現在の価格:3636円
この反応スピードとアカイアスケールのを比べてみると、アカイアスケールが若干早いのは確かですね。その差にエキサイト、なのです。

しかし、反応スピードで比較すると、実は製菓用のタニタのスケールのほうが、この2種のスケールよりいいと感じます。デザインはアレですが(笑

2016年8月現在の価格:1747円

これにはハリオやアカイアのようにストップウオッチ機能がついていません。ストップウオッチ機能がついててコンパクトなドリップ環境が欲しい場合や、それを使うことにステータスを感じている場合は論外になります(笑。しかし、コーヒーの品質を考えれば反応スピードは大事なことであり、見た目よりも機能を取るべきなのではないか、と思うのはだめなのでしょうか?わたしはおいしいコーヒーが飲みたいので、タニタを使ってしまいますね。

 

●本体の感想:「0.1g単位で見れる!」は部分的だった!
さきほどのエキサイト項目のもうひとつのほう、「0.1g単位で見れる!」ですが、アカイアスケールでそれを実現するには、スマホなどモニター越しでないとできません。←これを強調するのはあたりまえなのですが、別角度からあとで解説したいとおもいます。

スケールでの表示は0.1g単位ではなく1g単位(アプリでは0.1g単位で見れる)となります。

こんなかんじになります。左が時間経過、右がグラム。

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スケールの設定をグラム表示のみに変えて、かつそれを0.1g単位に設定することはできるのですが、そうするとタイムを計れなくなり、結局タイマーを併設で使わないといけなくなります。

こんなかんじになります。

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●本体の感想:直射日光のもとでは、デジタル表示がまったく見えない
出張出店などで外でドリップするケースがあったのですが、直射日光があたる環境下ではデジタル表示がまったく見えませんでした。

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外でかっこつけたい場合、かなり苦戦することになります(笑

●本体の感想:リセットボタンの反応の悪さは、使用目的により評価が分かれる
ブリューイングにおいて、どんなステップでドリップ・ブリューをするかによるのですが、スケールのリセットボタン機能がほかのスケール比較(特にタニタとの比較)ではかなり鈍いので、ドリップ・ブリューの手順によってはイラッとくる可能性があります。

わたしは粉をドリッパーにセットしたあとに、ポットにお湯を注ぎ、スケールのグラム数を0にリセットしたらドリップ開始、というプロセスを踏むのですが、リセット→注湯をスムーズに行いたいのです。しかし、アカイアコーヒースケールのリセット後の反応が鈍いので、1呼吸くらい待たされます。これがイラッとしました。

これを指摘する業界関係者がほぼ皆無だったので、VERVEコーヒーやブルーボトルコーヒーでどう使われているのかをウオッチしてみたのですが、彼らはスケールのリセットを押したあとポットの準備をしていますね。これならリセットされてる間は別の作業をしています。わたしはカフェ出店で混雑時にイラッとさせられたのですが、リセット→注湯のパターンのほうが効率的だと感じているので、オペレーションの組み立て環境により感じるかどうか、という結論でしょうか。

個人で1杯を淹れる場合には、もしかしたらこの鈍さは問題にならないかもしれません。

 

●アプリの感想:ドリップ器具ごとのブリューイングレシピとして活用度は高いが個人には不要
アプリには、ケメックスやクレバー、エアロプレス、ハリオV60などの器具ごとに、ムラシは●●秒、注湯はここから、とガイドが流れてくるので、デフォルトプログラムをそのとおりにやってみると腑抜けた感じはしますがそれなりに結果を出すことが可能です。

これは、たくさんのハンドドリッパーを抱えるコーヒーショップが、味を統一するために店員教育として活用するのに非常に向いています。オリジナルドリップパターンの登録も器具ごとに可能で、かつ豆の量と希釈目安を設定できるので、教育用としてはポイントが高いですね。

ただ、ドリップ対象の豆のコンディションデータによる微調整ができないことや(たとえばロースト初日の豆と20日目の豆におけるドリップ法をかえること、とか)、ミルの挽き目ごとのレシピ設定(同一器具に対して複数のパターン登録が不可能)がいまのところできないこと、さらに、アプリの中の余計なデータ登録としてお湯の温度設定がそもそもできなくて無駄にいらいらする点などは「いまのところ」減点材料であり、このあたりをつきつめたくなる個人系ドリッパーには足らない機能と感じるかもしれません。

器具ごとの淹れ方を学ぶのは、youtubeに行って「エアロプレス」「ケメックス」といった検索ワードで淹れ方を披露してくれている動画を、再生回数の多い順から最低10個見てみて、むらし、注湯、仕上げまでの時間の3点について共通するポイントを抽出した後、それを真似てみるとだいたいいい感じになりますので、アプリのデータがどうのというよりは上達でいったら早いと思います。

エアロプレスの淹れ方
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9
ケメックスの淹れ方
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B1%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

 

●アプリの感想:アカイアスケール1つあれば、データは見放題。だが。
スケールを動かすアプリは無料で配布されているので、アカイアスケールを使って自分のブリューイング状況をみたい人は、ともだちの誰かがアカイアスケールを持っていれば、自分で所有していなくてもデータを蓄積でき、見ることができます。

コーヒーショップでも実際に行われていた方法ですが、受講者にアプリを自分のスマホにそれぞれダウンロードしてもらい、1つのアカイアコーヒースケールを順番に使いながらデータをそれぞれ取っていってました。これだと、アプリを持ち歩いて、その場所ごとにあるスケールを拝借してデータを取る、というようなことができますが。。。。そんなことをする人は、コーヒー教室に定期的に通う人くらいかもしれません。。。

アプリでは、世界に公開しているほかの人のデータも見ることが可能です。

問題は、アカイアスケールとコネクトしていないときに、データレビューをいつでもどこでも行えないことでしょうか。グラフの写真は、アプリを内蔵したスマホやipadなどで見ることが可能ですが(おそらく”image”という別名でギャラリーに保管されている)、ドリップしたときの豆の情報などは見れません。レビューがしっかりできないのでは、なんのためのデータ取得なのか、と思いますね。

 

●アプリの感想:ドリップデータはいまのところグラフ表示のみ。では意味がない
ドリップデータは、たとえば5秒目に何グラムのお湯が入ったか、というような数値を、時間ごとに表示してくれるわけではなく、ブリューイング(ドリップ)におけるデータ変化を一目見てわかるようなグラフ変化図にしていまのところ表現しているだけです。

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なので、いいドリップ結果を真似てみたい場合には、そのお手本となるドリップのグラフ変化になるべく近づけようという、なんともアナログなまねっこによって再現するしか法がありません。

グラフ化できるということは、細かい数値データが蓄積されていることを意味するので、それを時間ごとにどう変化していったかをエクセルなどに自由に落とし込めるようにできると、「いいドリップ」の研究が促進されると思います。

・全体の総注湯量を時間ごとに追うことができる
・1注湯ごとの量を時間軸上で確認できる

まあ、これができるようになると、同時に「いいコーヒーメーカーづくり」も促進されることになるので、ハンドドリップの意味が最終的にはなくなってしまうかもしれませんが、喫緊の課題であるおいしいはずのコーヒーがへぼく抽出されてしまい、コーヒー好きが増えていかない問題の解消促進こそが大事だと思うので、ここの見える化は非常に大事だと思っています。

 

●全体の感想:高いよやっぱり
導入が少ないのはやはり価格だと思います。小売価格で23000円。0.1g単位で計れることがウリですが、同様なものは製菓用で2000円前後で、ヨーカドーなどで購入可能です。

さらに、本国小売りサイトの同スケールの価格を見ていると、バラバラで最安値で130ドル近辺、高いのだと300ドルとあって、本国経由で購入したほうが、もしかしたら安くなるのではないか、と思ってしまいます。

アプリをダウンロードすればいいだけなので、本国経由で購入しても、英語が読めないからどうのこうのという問題はないのです。

同スケールは、製品の分類上「精密機器」に入るそうなので(日本支部長コメント)、直輸入という手続きが可能かどうか微妙なところ。なので、安値で出しているショッピングモールに、直接取引による輸入は可能か、という問い合わせをしてますが、「メールに返事がきたためしがない」国民性から、半年経過した今でもお返事はいただいておりません。電話すると一発解決なんですが、経費かかりすぎなので、そこまでする気になれません。

 

●まとめ
こうやってリストしてみると、導入評価としては100点満点中50点がいいところです。場合によっては製菓用スケールより使えない、となります。が、こういったレビューをする前から高い買い物に踏み切ったのには、わけがあります。

・大体の不満点はアプリの機能不足にある
・構造上の問題は、道具の追加で解消可能

道具の追加は、やってしまうと元も子もないのですが、データ収集とその結果表示に不満の大半があるので、

アプリを改善すれば大化け

であることは確かです。

・スケールとつながってなくても自分のドリップ結果をスマホアプリ上でレビューできること
・ドリップデータをグラフ表示の直感型ではなく、データのダウンロードがいつでも可能な真のデジタル型にしたら研究し放題になる

というのは、ちょっとちゃんと考えれば思いつくポイントだとは思いますが、さてさて改善されるのでしょうか。それまではうちのアカイアスケールは置物になってると思います。
あ、ひとつ別の意味でおもしろい感想がありました。

 

●アカイアスケールを持ってると、自称プロは特別な目でわたしを見てくれるw
「おー、これ持ってるんすかー!」
というようなことをだいたいの自称コーヒーやさんたちがわたしに声をかけてくれます。
おかげさまで、あてずっぽうのコーヒー知識のようなことを言われなくなりました。
グラム表示や経時変化におけるドリップ技術のことなどを逆に詳細に振れるので、いろいろとおもしろい話ができるようになりました。

ちなみに最近渋谷に出店した時に行ったドリップ体験会で、感動のあまりコーヒーのドリップを無許可で撮影した挙句、飲み比べをした代金を払わないで帰っていったコーヒーやさんがいておもしろかったですw