ブルーボトルコーヒー買収は、コーヒーやにとって夢の終わりか、始まりか

コーヒー 自由研究


サードウエーブコーヒーの雄、ブルーボトルコーヒーがネスレ傘下になるニュースが先週末、一斉に報じられました。ネスレの規模に比較すると、ブルーボトルコーヒー買収は大したことではないはずですが、日米の主要新聞が取り上げたことで、ニュースは世界中に配信されています。
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コーヒーをよく知る者にとって、ネスレはインスタントコーヒーを筆頭にコマーシャル・ロウレベルのコーヒーを大量生産・大量販売する会社。その会社がコーヒーの最高品質であり、かつ希少種で大量生産が限定されてしまうスペシャルティコーヒーを取り扱うトップ企業を買収することは、今後スペシャルティコーヒーの市場が、コマーシャル品として量を重視してクオリティの低下を招く夢のないもになってしまうのではないか、と心配するニュースでもありました。
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スペシャルティーコーヒーは、どこに行くのか、とさえ思ってしまう大事件ととらえたコーヒー好きは、かなりいたのではないでしょうか。
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しかし、資本主義の理論からすると、ありえない買収がありえない金額で成立していることから、スペシャルティコーヒー市場はいまだブルーオーシャン市場なのだ、という示唆に富んだニュースだったのでは、とも思います。
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コーヒーを愛する者にとって、ブルーボトルコーヒーの買収は、夢のある話なのか、そうでないのか。まずは買収ニュースからもれてきたその内容を勝手に検証してみたいと思います。

◆470億円の調達で55店舗設立目指す、程度なのか?
ブルーボトルコーヒーは、今回の買収で発行済み株式で68%分をネスレに譲る代わりに、470億円の調達を達成しました。これを計算すると、ブルーボトルコーヒーの時価総額は691億円となります。
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これを、日本の株式公開市場で規模比較してみると、下記のような会社が近いことがわかります。

時価総額順位としては1000位前半。おもしろいことに、発行済み株式数もだいたい2000万株台と似通っています。仮に、順位前後の株式数からブルーボトルコーヒーの発行済み株式数を2500万株とすると、株価は2764円となります。27店舗しかもっていないお店としては、高すぎです。
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ただ、この前後の会社がどのくらい店舗を持っているのか、また業績はどうなのか、というものを改めてリストしてみると、ブルーボトルコーヒーの潜在性を感じざるを得ない、とわたしは思いました。

比較対象の企業は、保有するすべてのブランドとそれに伴う店舗のすべての数を合計したもので、これまた700店前後であることがわかります。「今後55店舗まで増やす」というリリース内容は、現状の同程度の時価総額外食産業の店舗数に比べると、まだ少ないのではないのか、と思います。高級コーヒーを取り扱う分だけ、多店舗展開は難しいものの、現段階では120店舗くらいの拡大でもいけるのではないか、と思いますが、資本政策が見えてこないため、どこにお金を使うかがわからず、なんともいえません。
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◆まとめ
わたしはブルーボトルコーヒー買収ニュース、「かなりおもしろい」と思っています。
時価総額類似企業を比較してみると、店舗数ではまだまだ拡大余地があると思えますし、規模拡大ではない資本の使い方になったとき、どんなM&Aがあるのだろう、と想像が尽きないからです。創業者だけがビリオネアになって脱出なんていう、ゲスな結果になっていないので、ひとまず安心ではないか、と。
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また、しっかりとしたコンセプトメークとビジネスモデルを打ち立てれば、小規模でしか成り立たない、と思われていた「コーヒーや業(しかもスペシャルティー市場にて)」が価値ある事業として多くの人たちに貢献できるものである、という一例を示してもらっていると思います。事業資金がなければシリコンバレーでコーヒーを淹れて、投資家をうならせればいいのです(実際に2番手、3番手が出てきています!)。日本やドイツにも、そういった芽は出てきてもおかしくはないと思いますが、どうなんでしょう。
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今後のブルーボトルコーヒーの展開を通じて、ビジネスのエッセンスを見習っていきたいです。