スペシャルティコーヒーの新フレーバー分類表を和訳してみると、ヤバい内容満載だった

カッピングとは

20161224-1
スペシャルティーヒーを判別するためのフレーバーリストは無限にありますが、それらをまとめなおして100以下におちつかせたのが、SCAAのフレーバーホイールです。これらをそれぞれ和訳してみると、、、「え!?」と言いたくなるフレーバー表現がたくさん出てきましたので、その報告となぜそんなリストが正式に採用されたのか考察してみました。

SCAA_FlavorWheel.01.18.15

フルーティ Fruity
——————————
[ベリー] Berry
├ ブラックベリー Blackberry
├ ラズベリー Raspberry
├ ブルーベリー Blueberry
└ ストロベリー Strawberry

[ドライフルーツ] Dried Fruit
├ レーズン Raisin
└ プルーン Prune

[その他フルーツ] Other Fruit
├ ココナッツ Coconut
├ チェリー Cherry
├ ザクロ Pomegranate
├ パイナップル Pineapple
├ グレープ Grape
├ アップル Apple
├ ピーチ Peach
└ ピール Pear

[シトラスフルーツ] Citrus Fruit
├ グレープフルーツ Grapefruit
├ オレンジ Orange
├ レモン Lemon
└ ライム Lime

全19種。ベリー、シトラス(柑橘)は、かなりの頻度で目にするフレーバーですね。その他フルーツ分類の中にあるフレーバーのほとんどは、焙煎がうまくいったときに出る香りの典型的なリストでもあります。シトラスの分類が甘かったり(グレープフルーツやみかん、オレンジでもバレンシアオレンジとかで多様)、レーズンもピンキリ、ストロベリーもキイチゴや完熟度合によってかなり違う点が反映されていません。カッピング会では、このあたりの細かい分類も表現として頻出しているので、おそらく将来はさらに細分化されるとは思います。

 

サワー・発酵 Sour/Fermented
——————————
[サワー] Sour
├ サワーアロマティック Sour Aromatics
├ 酢酸 Acetic Acid
├ 酪酸 Butyric Acid
├ イソ吉草酸 Isovaleric Acid
├ クエン酸 Citric Acid
└ リンゴ酸 Malic Acid

[アルコール・発酵] Alcohol/Fermented
├ ワイニー Winy
└ ウイスキー Whiskey

全8種。「冗談でしょ?」という香り(でいいの?)のリストが堂々とあります。イソ吉草酸は、「足のニオイ」、酢酸は悪い意味で「すっぱさ」、酪酸は「バター臭さ」なども連想してしまいます。レモンから出る酸味を「サワー」と表現することはままありますが、いい意味ですっぱさをこれにまとめてしまってるのが現場での現実ではないでしょうか。実際のコーヒーで感じたことがあるのは、サワー、ワイニーとウイスキー。ワイニーは、赤ワイン系統の濃厚な芳香、と言うとわかりやすいかもしれません。ワイニーについてももっと細分化されてしかるべきではないか、と思います。

 

グリーン・ベジタブル Green/Vegetative
——————————
[オリーブオイル] Olive Oil
└ オリーブオイル Olive Oil

[生の] Raw
└ 生の Raw

[グリーン・ベジタブル] Green/Vegetative
├ 成熟前の Under-Ripe
├ エンドウ豆の鞘 Peapod
├ フレッシュ Fresh
├ ダークグリーン Dark Green
├ ベジタブル Vegetative
├ 干し草っぽい Hay-Like
└ ハーブっぽい Herb-Like

全9種。この分類も「お笑いネタか?」と思わせるリストが満載です。「生のグリーンベジタブル」=要は青臭い??「干し草っぽい」「エンドウ豆の鞘」とかだめだろ(笑)。過去に干し草っぽいのをテースティングしたことがありましたが、これは「古い豆」の傾向を示してると、現場感覚では感じます。こういうのがリストされてしまうというのは、オークション豆でも「ちょっと・・」というのが多く持ち込まれてしまってる現実があるのではないでしょうか。

 

その他 Other
——————————
[紙/かび臭い] Papery/Musty
├ 古くさい Stale
├ 段ボール Cardboard
├ 紙 Papery
├ 木材 Woody
├ じめじめしたかび臭さ Moldy/Damp
├ ほこりっぽいかび臭さ Musty/Dusty
├ 土っぽいかび臭さ Musty/Earthy
├ 動物っぽい Animalic
├ 肉っぽい/ブイヨンっぽい Meaty/Brothy
└ フェノール Phenolic

[ケミカル] Chemical
├ 苦い Bitter
├ 塩っぽい Solty
├ 薬っぽい Medicinal
├ 石油っぽい Petroleum
├ スカンクっぽい Skunky
└ ゴムっぽい Rubber

全16種。きゃーーー!って叫びましたわw 「かび臭さ」はチーズのような発酵臭におさめたかったのですが、実情として「じめじめした」「土っぽさ」なんてのがリストされてしまったら、あっちの「かび臭さ」と言わざるを得ません(逆に、チーズっぽい香味を全体でもしっかりと定義していなかったりする)。ケミカルの苦い、塩っぽい、などは、辛味をどう分類・表現するか、という苦悩から生まれた分類に見えます。実際に出会った香味は、苦い、塩っぽい、ゴムっぽい、でしょうか。ここでリストされるかび臭さは、市場テースティングの時点で出てくる「はじかれる豆」の決定打で使われている表現だと思います。

 

ローストした Roasted
——————————
[シリアル] Cereal
├ 麦っぽい Malt
└ 穀物っぽい Grain

[焦げた] Burnt
├ 茶色、ロースト Brown, Roast
├ 煙っぽさ Smoky
├ 灰 Ashy
└ 酸化っぽさ Acrid

[タバコ] Tobacco
└タバコ Tobacco

[パイプタバコ] Pipe Tobacco
└パイプタバコ Pipe Tobacco

ローストの度合によって感じる香味、というか、「どのくらい焙煎うまくいったか?」を端的に示す表現です。シリアルでリストされているのもちょっとあやしいですが、その他は生焼けか焼きすぎのときに出ますね。意外と堂々と書かれているのは「タバコ」です。カッピング会で複数リストされたものでは、この表現は煙臭さと苦みが含まれた臭気、と参加者から感想が出ています。決していい表現ではありません。

 

スパイス Spices
——————————
[ブラウンスパイス] Brown Spice
├ クローブ Clove
├ シナモン Cinnamon
├ ナツメグ Nutmeg
└ アニス Anise

[ペッパー] Pepper
└ ペッパー Pepper

[鼻にツンとくる] Pungent
└ 鼻にツンとくる Pungent

全6種。ブラウンスパイスのリストは5つ。少なくないか?と。カッピング会では山椒、ブラックペッパーなども出ました。なので、「ペッパーっぽい」でおしまいなんて、表現を途中放棄したような感じがします。世界共通としてわかりやすいものにしたと思いたいですが、もっと細かく分類してもいいのでは、と思います。

 

ナッツ・ココア Nutty/Cocoa
——————————
[ココア] Cocoa
├ ダークチョコレート Dark Chocolate
└ チョコレート Chocolate

[ナッツ] Nutty
├ アーモンド Almond
├ ヘーゼルナッツ Hazelnut
└ ピーナッツ Peanuts

全5種。意外にアバウトなリストで驚きます。チョコレートをつきつめると、「カカオ」が出てきますが、これはダーク(=その他・ケミカルの中にあるビターも含めて)とそうでないものの違い程度。ナッツも、カシューナッツやマカダミアナッツ、ビスタチオ、がリストから漏れています。

 

甘さ Sweet
——————————
スイーツアロマ Sweet Aromatics
└ スイーツアロマ Sweet Aromatics

全体的に甘い感じ Overall Sweet
└ 全体的に甘い感じ Overall Sweet

バニリン Vanillin
└ バニリン Vanillin

バニラ Vanilla
└ バニラ Vanilla

ブラウンシュガー Brown Sugar
├ はちみつ Honey
├ キャラメル Caramelized
├ メープルシロップ Maple Syrup
└ 糖蜜 Molasses

バニラとはちみつ系の分類はきっちりやってますが、その他の甘味については細かい分類に踏み込んでません。甘味を感じるときにはコーヒーアロマや旨味も同時に感じるため、その深みの度合によって同じ「スイートネス」も表現が多様化します。

 

フローラル Floral
——————————
[ブラックティー] Blacktea
└ ブラックティー Blacktea

[フローラル] Floral
├ カモミール Chaomile
├ ローズ Rose
└ ジャスミン Jasmine

ブラックティーのラインナップがこんな程度かと思うとがっかりします。フローラルの分類も意外と少ないですね。しかしそのほかだと、「華やかさ」「フローラル」という一般的表現が出てるくらいですね。

 

まとめ
スペシャルティコーヒーのテースティングの指標となる、SCAA監修のフレーバーホイールを細かく分析してみると、「足のニオイ」や「かび臭さ」など、リストに上がってきてはいけない表現が3分の1くらいあるのに気づきました。

そのフレーバーをさかのぼってみれば、かび臭さは運搬でカビが生えてしまった豆であり、足のニオイは処理を失敗した結論であることがわかります。

わたしたち消費者レベル・店舗レベルでフレーバーホイールを考えると、スペシャルティコーヒーにはハズレがあるのではないか?と危惧してしまいますが、作った人たちのバックグラウンドを考えると、このホイールはスペシャルティコーヒーであるかを判別する最前線・オークション現場でのテースティグにおける分類表現であることを推理することができます。ヤバイ表現のほとんどは、「これはスペシャルティに分類できない」という区切りの一言ではないでしょうか。

しかし、消費レベルでもタバコ、サワーなど歓迎できない表現が跋扈しているのも事実です。これらが許容されるのは、たとえば86点の豆を過剰に焙煎してしまってテースティングしても、82点くらいまで下がってしまったけど、80点を割ってないからOKじゃね?でつけてしまった、と言い換えることもできます。感じたフレーバーを素直につけてくれてるのはいいことではありますが、より豆のよさを反映する焙煎にチャレンジしてもらいたい、とも思います。