スペシャルティコーヒーのテースティング技術・カッピングの評価項目と自宅でやるポイント

カッピングとは

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コーヒーの酸の質を見極め、良いところをポイント化していこう、というカッピングの評価項目について、簡単にまとめておきます。今回はカッピングの本家・SCAAフォーマットで説明します。

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SCAJ式に馴染みがある人もいると思いますが、それは評価項目の英語を日本語に替え、かつポイントをつけるときの感覚を10点法ではなく8点法により簡素化させただけの違いです。簡素化させたといっても、大した変更ではないので、本家のスタイルをまず知っておくことに難はないと思います(っていうか、国際標準のはずなのに亜種のフォームがあること自体、おかしなハナシなんですが、まあ黎明期ってことでわたしたち消費者は大目に見ましょう)。

ポイントをつけていく項目は10項目。これらの点数が80点以上スコアになることが、スペシャルティーコーヒーとしてのグレーディングになります。前半6項目が香味のキャラクターを、後半4項目が銘柄としての安定性を計り、選者の意見を述べるところになります。

1.フレグランス・アロマ(あわせて10ポイント)
粉のときの香りはどうか、ということと、ブレークしたときの香り、さらにはブレーク後の香りを総合的にポイント化します。はっきりとどんな香りかわかるくらい強い芳香がたちこめ、それが持続するほど高得点です。

2.フレーバー(10ポイント)
コーヒーの味の基礎です。どんな味がするか、そしてそのインパクトはどのくらいか。

3.アフターテースト(10ポイント)
感じた酸味のインパクトが、すすったあとも持続するか。

4.アシディティ(酸味:10ポイント)
酸味の質。すかっとさわやかな感じがする、すっぱくて芳香がぼやけていく、というような評価。特徴があればあるほど高ポイントに。

5.ボディ(コクの強さ:10ポイント)
コクの構成要素でもあります。とくに舌の上で感じるコーヒーのなめらかさと粘性について。滑らかさの中に強く・広く香りが乗っていればボディは強く、細く可憐に乗っていればボディは弱い、となります。

6.バランス(10ポイント)
No.1~5がどのようなバランスを作ったかを判定するもの。

以上がスペシャルティーコーヒーのカッピングでポイントを測る重要な6項目です。あとの4項目ですが、これらはスペシャルティーコーヒーとしてはあたりまえの満点要素なのです。ですから、わたしたちのようにすでにスペシャルティーコーヒーだよ、とわかっている人間たちのカッピングでは、無条件で10点満点をつけます。

しかし、スペシャルティーといっておきながらそうでないコーヒーもたまにあります。そんなときに持ち出す評価として参考にリストします。

7.スウィートネス(10ポイント)
甘さの判定です。

8.クリーンカップ(10ポイント)
コーヒーを口に入れてから吐き出し、その余韻を味わうまで、他の味が干渉してくるマイナス要素がないことを測ります。石ころが入ってたり、虫の死骸が入った豆だと、これは維持できませんよね。

9.ユニフォーミティ(10ポイント)
これは、同じ銘柄を複数のカップ(5カップ以上)でカッピングしたとき、味の一貫性が保たれているかどうかをポイントにします。へぼ豆が多いと、5カップやったときにカップごとに味が大きく異なってきます。スペシャルティーでも、焼きムラなどは味が異なる原因になります。

10.オーバーオール(10ポイント)
評価者の個人的見解を反映できるコーナー。

消費者目線でのカッピングの特徴

品評としての正規のカッピングと、すでに専門店を通じてわたしたちの手元に届いている豆のカッピングの差は、
焙煎度合の違い(深い、浅い)
焙煎後どのくらい経過したかの時間の差

という要素が加わります。

カッピングは、焙煎コード(釜の種類、焙煎時間、焼成時に何グラムずつ投入するか)と焙煎後●●時間以内と指定されていますので、品評では単一焙煎、単一時間内で評価を行うことになっています。しかし、流通段階になると、シティで品評したはずの銘柄がフレンチになっていたり、10日後のものだったりします。保存状況もさまざまなので、観測できる香味は品評時点のものと一致しないことが多いです。が、総じて悪くなるのが基本と思っていいかと。

わたしたちが買うコーヒーの銘柄説明としてラベルに香味の特徴がリストされていますが、だいたいは品評時につけられたオフィシャルなものをコピペしています。

困ったものです。これでは説明になっていません。

後半4項目は基本的に満点のはず

スペシャルティーとして出荷されてるので、わたしたち消費者は前半6項目のテースティングに集中するといいのですが、
80点ギリギリのもの
焙煎がヘタレすぎて、点数を大きく乱してると考えるもの

については、この4項目もみていく必要があります。

点を下げる要素で、わたしたち消費者がくらってしまうのは、ヘタレ焙煎による焼きムラの発生と、焼すぎによる焙煎臭です。

ですので、購入時に点数を確認したいのですが、そもそも点数を公表しているお店は皆無です。聞いても不思議な顔をされるかにらまれるかのどちらかです(笑

透明性を高めるために設けられた制度のはずなのに、おかしいですね。

まとめ:おかしいなとおもうからこそ、そして楽しみたいからこそ

国際標準のコーヒーのテースティング基準、カッピングの10の評価項目を解説してみました。消費者段階では、すでに「スペシャルティ」として受け取っているので、集中すべき項目は前半の6つ。しかし、焙煎度合や保存具合によっては後半の4項目についてもみてみることが必要になります。

焙煎度合の違いと保存の時間の要素が加わっているので、消費者カッピングは品評のそれよりも難しくなっているといえますが、やっていくしかありません。

消費者であるわたしたちこそが、カッピングができなければなりません。国内のワイン需要が急激に伸びた重要な要素のひとつに、ワインのテースティングが広がったことが挙げられます。知識が幅広く共有されることによって、味の理解が広まり、研さんされていったからです。コーヒーにも同じことが言えますが、消費者がテースティングをするまでには至っていませんね。逆に公開されなければならないものが見えなくなったり、せっかくの品評がなされていても販売時点ではどう変化してるかの説明がなされる様子が見えない。これらは消費者から指摘されないから起こってる現象ともいえるのです。こういう状況が続けば続くほど、日本にはおいしいコーヒー豆は入ってこなくなり、いいものは海外に奪われて行ってしまいます(現にそういう状況ですけどね)。巡り巡って、わたしたちはおいしいコーヒーを楽しむことができなくなるのです。

せっかくの高級コーヒーを、カッピングにチャレンジすることでもっと楽しみましょう。それは日本のスペシャルティコーヒーの品質向上につながるのですから。