おいしいコーヒーを表現するときに使う味の用語の使い方を五感から改めて分類してみた

20160326-3

コーヒー 味?
コーヒーの味??
聞かれてみると、実はちゃんと表現できません。
「コーヒーの味って。。そう、あの香ばしさ」
みたいな?
でもそれって、表現になってませんw

おいしいコーヒーの定義でよく聞くのは、コク、苦味、酸味、香味。味ではないけれども「味わい深さ」というような表現も耳にします。そもそもコーヒーのもつ独特のアロマは基本的に「いい香り」として多くの人に認識されてますね。また反対に、いやな味、として聞かれるのは、苦味、酸味、えぐみ、渋味でしょうか。

この中では、酸味と苦味がおいしい味といやな味両方に属してます。また、わかったようでよくわからないもので、風味、香味という表現もありますね。スペシャルティーコーヒーが流通してくると、フレーバーやアロマという外来語もそのまま使われており、どの人の表現とどの人の表現が一致するのか、利用する側である私たちにとってはとても混乱します。

コーヒーのおいしさを共有するためには、このあたりの表現をまず整理する必要があると思います。おいしさがどんなものかを具体化するためには、たとえば「酸味」ということばを「おいしい味」として扱うほうがいいのか、「だめな味」として扱うようにするのか迷っていてはいけないのです。

味の表現のそもそもの定義をまとめていくと、重視すべき味とそうでない味が具体的に何かということが見えてきます。これがわかると、コーヒー屋さんやコーヒーを知ったかぶった人たち(笑)の話を聞いていても、その場の雰囲気に流されることなくおいしいコーヒーについて情報分析ができるようになります。

ヒトの五感から科学的に判明している味についてのことから、おいしいコーヒーの定義に必要な要素は何か?絞り込んでいきたいとおもいます。

●その1:味覚に言われる5つの味で、コーヒーの「おいしい」を見出す

ヒトが味を感じる基本的な機能は、五感の中では味覚がそれになります。味覚で感じるものが、まずは「味」の基本中の基本と言っていいでしょう。そこで感じる味は、大きく分類すると2016年現在5つあるといわれてますね。

甘味、塩味、苦味、酸(すっぱい)味、旨味。

味を感じる理由は、体に摂取していい場合にはうれしい反応を、ダメな場合には痛いくらいにいやな反応をするので、わたしたちにとっていい味もいやな味もそれぞれにリストできる味がそろっているといえます。5味を簡単にそれぞれに分類すると、

うれしい反応 = 甘味、塩味、旨味
だめな反応 = 苦味、酸味

ということになりますかね。
生理学的に、受け入れていい味というのは、コーヒーでいうと

甘味と旨味 となります。

●その2:なぜか語られるコーヒーの酸味

酸味については、いい味とだめな味、という両方の見解がありますが、生理学的には発酵度合を感じて人体に影響がないかを「すっぱみ」を通じて判断する味なので、コーヒーに対してもだめな表現である、と結論付けていいと思います。

ところが、スペシャルティーコーヒーのキャラクターを語るとき、「酸味」という表現でそれを説明する関係者がものすごく多いですよね。では酸味を「おいしい」と表現してることは、どこからきたのでしょう?

スペシャルティーコーヒーの評価フォーマットの中に、酸の状態(Acidity)という項目があり、これが日本国内で「酸味はいい味」とする原題になっています。
すっぱみとして分類する酸には、りんごやオレンジ、レモンなどフルーツのもつすっぱさも酸味として形容しますから、この部分を取って「酸味はいい味だろ!」というのです。

いっぽう、コーヒーがキライ、という人の意見の多くに、「すっぱいコーヒーはイヤだから」というのがあります。この場合のコーヒーの酸味とは、ローストした豆が酸化した酸化臭か、生焼けの豆をドリップして感じるすっぱさによる「すっぱい」です。「すっぱいコーヒーがきらい」と言ってる人は、直感的に、飲んだコーヒーが酸化していたか生焼けだったものを飲まされたことに気づいている、と言えます。これは理屈の上でもあってますよね。

コーヒーやさん、とくにスペシャルティーコーヒーを扱うお店の人がいちばんうんざりしていることは何かというと、コーヒーを「すっぱいのはイヤ」というお客さんが毎日のように来店することだそうです。コーヒーがいやなら来るなよ、と言いたくなりますが、そういうお客さんは苦味が好きだったり、酸味が何かわかってないけど、たまにおいしいコーヒーに出会えてうれしいから、トライし続けているのだ、ということでもありますので、無下にもできない、とも聞きます。

生焼けや酸化臭の豆を出してないならば、酸味はだめな味としてお客さんと共通認識をもてばいいのに、って思いますが。。かわりに香味という言葉を使えばいいのにっていつも思います(くわしくはのちほど)。

●その3:香味の登場とそのアヤシさ

コーヒー自身のアロマのほかに、フルーツやナッツの香りを多様に感じるスペシャルティーコーヒーが普及しだすと、その表現を体系化する必要が出てきます。それをまとめたのが、全米スペシャルティーコーヒー協会(Specialty Coffee Association of America; SCAA)が公表しているフレーバーホイールですね。

SCAA_FlavorWheel.01.18.15

by Kubota, Content and Communications Manager, SCAA Jan.19 2016

ところがこのフレーバーというのは、厳密に考えると嗅覚の担当部類に入ります。直接的に感じる味というのは、先に示した甘味と旨味。酸味をいいようにとらえれば、フレーバーのほとんどをこのカテゴリーに含めるしかないのですが、かなり強引であるというのは、このホイールに示されている多様さを見ればあきらかです。

[コーヒーの味についての世界標準の分類表をいじった記事]
スペシャルティコーヒーの新フレーバー分類表を和訳してみると、ヤバい内容満載だった
http://yourucoffee.com/post-302.html

そして先ほどにも書いた通り、一般の人たちは基本的に酸味をいやな味として認識している以上(りんごやオレンジなど一部フルーツの酸をすっぱいながらも肯定して使ってる共通認識はあるが、レモンのようなすっぱさはどちらかというとマイナス扱い)、コーヒーワールドだけの都合で人類の味覚の真理をひっくり返すことはほぼ不可能である点で、フレーバーたちはどこに行けばいいのか、ということになります。

ということで、

①フレーバー、とそのまま使いだす人が出だした
②風味と言い出す人が出てきた
③香味と言い出す人が出てきた
④酸味である、と押し通す人がいる

の4つのタイプに枝分かれしてフレーバーが使われるようになりました。
簡単にいうと、
同じひとつのことを、4つの別の言葉で表現しあっている、という状態があふれているといえます。利用者にとっては迷惑極まりないことです。これでは味の共通認識は持てないですよね。

生理学の分類に立ち戻って、これらを解析してみると、「フレーバー」は嗅覚の外来語であり味ではありません。風味は味覚・嗅覚・触覚で感じた食べ物そのものの認知の状態を指し、味と判断する前の「資料」の状態をいい、香味は風味のさらに前段階の、嗅覚をよりどころにした味の「資料」の状態を指します。

●その4:苦味は「いまのところ」味にあらずといえるが味と認識されてることについて

苦味は、味覚の中で認識されているものの、触覚である痛覚の部分などでも認識されていることから、味の中ではかなり特殊なケースです。似たようなもので、辛味、渋味、えぐみというものがありますが、この差異が科学的にどういったものなのか、どこからが渋味でどこからが苦味なのかという線引きなどという具体的な説明は、わたしはリサーチの中でみつけることができませんでした。まだまだ味覚についてはわかってないことのほうが多いようです。

味覚の真理からいうと苦味はだめな味である点で、味の評価ではマイナスとすべき項目です。

ところが、苦味がクセになる、という人がたくさんいるのも真理です。

これは、特定の苦味が、年齢を重ねると受け入れることができるようになり、はてには中毒性をもって好きになる傾向がヒトにはたくさん起こっている、という観察結果があるようで、この研究も苦味のしくみ解明テーマであると、リサーチをしていて複数の文献から知ることができました。

これはコーヒーの苦味好きにぴったりあてはまると、わたしは個人的に思います。

●その5:風味と香味はごっちゃにされている

ヒトが味をおいしいと思うか、そうでないと思うかの判定には、味覚からはじまり、嗅覚、触覚と五感すべてでその対象物の情報を集めてまとめた結果である、というのは生理学上の基本のようです。なので、そのプロセスは樹形図の流れで段階的にどんな情報がつけたされていくか、というものがまとめられています。複数の文献から共通点を抜き出したモデルは、以下のようになります。

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しかし、
・基本味に嗅覚で感じる香り、
・そのつぎに食べ物の温度や口当たりで感じる触覚からの情報をまとめた段階
でなんと呼ぶか、というところで、「風味」とする研究者と「香味」とする研究者がいて、このあたりのコンセンサスが取れていないようです。というよりも、なんの研究がバックグラウンドにあるのか、という違いな気がします。

しかし、バックグラウンドに関係なく、プロセスを見てもあきらかなように、風味もしくは香味と呼ばれる段階の「味の資料」は、嗅覚によって得られる情報がつけたされてるという点で直接的な味とは少し違ったものであると思います。

嗅覚ベースから足された情報である、という認識をもって、スペシャルティーコーヒーのフレーバーをみてみると、なるほど納得いくことは多いのではないでしょうか。

たとえば、コーヒー豆からアボカドやシナモンの味はしませんし、それぞれのものでは決してないですよね。しかし、シトラスやプルーンと言ったフルーツ感や、カカオのような雰囲気を香りとして感じると見てみると、コーヒーノキの特性がフルーツなど果実モノと同系であることから納得できるのでは、と思うのです。

フルーツっぽい、という表現なら、いちごも、グレープフルーツも、メロンも、細かくは言えないけれどもフルーツっぽさをわたしたちは共通認識として持てるのと同じです。

●まとめ1:ゆるコーヒー会流にコーヒーの味のプロセスを再まとめしてみた

こんなかんじではないでしょうか。
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樹形図形式だとよくわからないので、サークル状にしたのと、香味と風味の違いを明確にしてみたことが大きなポイントです。

風味とは、間接的に感じとる情報を参考にして今判定中の味を結論付けたもの。
香味とは、今判定中の味に対して、主に記憶から呼び起こした同類の情報を、嗅覚を中心に呼び起こして感じている味

スペシャルティーコーヒーでフレーバーの表現を酸味としてるのは、現実的に無意味です。そのかわり、嗅覚由来の味の表現を香味とし、使うならば、理論上もずれてないのではないでしょうか。

また風味は、スペシャルティーコーヒー以外のコマーシャルレベルで使うとしっくりくると思います。昔からいわれるコクと甘味はまさに味覚由来であり、そもそもフレーバーの足らない豆を扱う上ではこちらのほうこそ重要なテーマでもあります。

風味と香味という表現を、バックグラウンドを理解したうえで利用者が使い分けることができるようになれば、コーヒー屋さんが伝えようとしていることを理解することができるのではないでしょうか。

●まとめ2:いまできる範囲内でたのしもう

味に関するポイントは、触覚の項目(温度やのどごしの質感)をからめるとさらに細かくハナシができるものですが、科学的に解明されていないことが多すぎるため、ある程度(といっても一般的には知ってどうなる、ということ)行くと行き詰まります。

科学的検証による客観的評価が、コーヒーの味の輪郭を浮き彫りにする上で大部分を占めるようになれば、味の議論は一定レベルでまとまると思いますが、その道のりはかなり険しく、遠いようにもリサーチをすすめていて感じました。

科学が追いついていかない繊細な世界で、わたしたちは味を判別している、というのは紛れもない経験則であり、誰もが納得できることだと思います。
その中でなんとなくはっきりしてきているのは、

・味の本来部分では、甘味と旨味である
・特に上位レベルのコーヒーでは「酸味」と言われているものを「香味」として扱うとしっくりくることが多くなる
・苦味は基本的にはだめな味。しかしそれに中毒性を見出すことも許容すべき
・風味と香味の表現の違いをはっきりさせることで、コーヒーやさんのいいたいことがよくわかるようになる

味の認知メカニズムを理解するということは、コーヒー屋さんが何を伝えたいのかをユーザーであるわたしたちが理解するための尺度を持つことを意味します。これにより経験則がベースではあっても、言ってることに矛盾を発見することもあれば、そうだね、と納得できることも出てくるはずです。

この選択ができることを手に入れることによって、コーヒーのおいしさとはどういうものなのかをはっきりさせることができ、それを通じておいしいコーヒーを淹れるための目標がはっきりとしてくると思うのです。

おいしいコーヒーを淹れるためには、まず情報の交通整理をしてみましょう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ゆるコーヒー会のコンテンツは、おいしいコーヒーをゆるく楽しむコーヒーユーザーの会。ロースターの意見に左右されず、自分の淹れたいコーヒーを自分で淹れる、楽しみたいコーヒーを自ら見出す。そしてちょっとだけ、仲間とシェアすることを目的にした、おとなのカルチャー文化部です。

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