おいしいコーヒーは、水に左右されます。軟水と硬水で同じコーヒーをドリップすると、まったく違う味になるのは、多くの人が知る通りですが、より繊細にそれを見ていくと、同じ水道水でも水系がかわれば味の感じ方が違ってくるのも、事実です。
わたしはお店をやっていたとき、紅茶を扱っていたのですが、茶葉のディーラーと妙に盛り上がったハナシとして、東京の水は東でおいしく、西でむずかしい、というものでした。
だいたいの都道府県では、水道水は単一水系と湧き水の組み合わせが多いようですが、福岡県のように10河川を水源としている複数水源の県なども存在します。首都東京は、利根川、荒川、多摩川、相模川と、4つの水系で水道が構成されています。
都内23区と市町村別に、主にどの水系を利用した水道であるか、を調べてみました。まとめた分布図は以下になります。
需給動向によって、これらの水道はお互い融通しあうこともできるようなので、常に同じ水系の水道とは言い切れないと思いますが、ほぼ分布図別に水系が異なる(=ふだん飲む水道水は、都内のどこに住んでいるかで味が違う)のはわかるでしょう。
どの水系が具体的にいいか、というのは、「東がうまい」というのならば、利根川水系の水道水がいい、ということになります。東東京というのは新宿より東側を指すので、それに該当する地域にまで広げると、荒川のみと、荒川と利根川のミックスもアリなんでしょうか。
むずかしい、と聞いたケースでは、その事業者は吉祥寺に出店していたので、水系を見てみると。。地下水なんですね。吉祥寺で感じた例をもって周りの地域の水の味もむずかしい、とするのはちょっと違う気がします。
東にやさしく西に難しいといっても、具体的に調査をしたわけではありません。しかし直感的に事業者たちは水道水に応じてコーヒーや紅茶の味をどう出すかという微調整をしているのは想像に難くないとおもいます。さらにいえば、その結果からさかのぼって、焙煎成果にも影響を及ぼしています。水の塩素部分はコーヒーにおいては苦みやえぐみを先鋭化させますので、それを抽出のときに出さないように抑える焙煎をしてる、ということも考えられます。そういった焙煎は、本来の豆の香味を引き出すことに対してバイアス要素なのではないか、と思います。
ちなみに紅茶を出すお店が妙に多い神奈川県は、相模川水系の水道水を利用していますから、東京にあてはめると、大田区西部でお店を出すといいのでしょうか?
●水系を意識するポイントはなにか?
水道水による紅茶・コーヒーの抽出で、品質管理をするのはいかがなものかということになります。墨田で買ったコーヒーが、奥多摩で飲まれたとしても、その味はまったく違うものになる可能性があるからです。同じ種類の豆がロースターによってこうも結果が違うのか、というのも、もしかしたら水系の違いが影響しているのかもしれません。自分の場合では、妙に納得していたりします。
浄水器をかけたり(といってもかなり高度なもの)、販売されているミネラルウオーターによる検証(といっても同一ブランドでも取水水系が違うものとかもけっこうあるんですが)も水道水で行うのと同時にほしいところではないでしょうか。
水系の違いというよりも、毎日の水道水に含まれる残留塩素濃度などの水質結果と味の関係は、意識する必要はあります。
前出の紅茶ディーラーと盛り上がったもうひとつのハナシとして、「雨の翌日の紅茶はうまく点てられない」というものがあり、それは微妙な水質の変化による影響が関係しているといえます。
●まとめ
まとめといってもまとまりません(笑)。水系の違いを感じるようになると、コーヒーの抽出結果というのは、人の抽出の腕の違いだけではなく、その水で検証したコーヒーの味からおこる焙煎結果による違いなども考慮すべき項目になりますね。
自分で焼いた豆が、思ったとおりの香味を楽しんでもらえてないかもしれないのですよ。
細かいそれぞれのカテゴリーは、科学的検証はおろか、テースティングなど官能検査によるレポートも皆無で、味がどうだと言ってる割にはトピックにされない不思議さがありますね。
水系の違いからコーヒーの抽出結果の違いなんかを飲み比べる会なども、おもしろいかもしれないですが、残留塩素濃度くらべなところもあるので、せめて世界のミネラルウオーターによる結果の違いくらべくらいにしようかな、と思ったプチリサーチでしたw